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東京地方裁判所 昭和45年(借チ)1003号 決定

〔主文〕1 申立人が、相手方に対し、本裁判確定の日から三か月以内に金五八七、〇〇〇円を支払うことを条件に、別紙目録(二)記載の増改築を許可し、かつ、右金員支払の月の翌月から本件賃貸契約の賃料を一か月3.3平方米当り金一四二円に増額する。

〔理由〕一 本件申立の要旨

1 申立人は、昭和一六年一一月一〇日相手方から別紙目録(一)記載の土地(以下「本件土地」という。)を賃借し、昭和三六年一一月一日契約の更新がなされ、期間は昭和五六年一一月一日までである。

2 申立人は、本件土地のうえに別紙目録(二)記載の現存建物を所有しているが、このうちの一部を同目録(二)記載の増改築計画のとおり増改築すべく計画中であるが、本件賃貸借契約には増改築につき賃貸人の承諾を要する旨の特約が存するところ、相手方の承諾がえられないので右承諾に代わる許可の裁判を求める。

二 当裁判所の判断

1 本件で取調べた資料によれば、申立人は昭和一六年一一月一日相手方から本件土地を、非堅固建物所有の目的、期間昭和三六年一一月一日まで、建物の増改築につき賃貸人の許諾を受ける旨の約で賃借し、右賃貸借は、前記期間満了にともない法定更新されたこと、申立人が、本件土地のうえに同目録(二)記載の現存建物を所有している各事実を認めることができる。

2 ところで相手方は、

(一) 申立人が、昭和二三年六月一四日ごろ本件土地を昭和三六年一一月一日期間満了と同時に明渡す旨約束し、本件賃貸借契約は、右期限の到来とともに終了したと主張するが、これを認めるに足る資料はなく、かりに右の合意が存しても、それは賃借人の更新の権利を奪うもので借地法一一条により無効である。

(二) つぎに、本件土地中南東角15.99平方米(4.839坪)は、工事材料置場として貸与したもので、相手方の要求次第いつでも返還する旨の約束があり、相手方は、昭和三〇年ごろ右土地部分の返還を請求したから申立人は右部分に賃借権を有しないと主張する。本件賃貸借契約証書謄本によれば、「本件賃貸借において、本件借地の内4.839坪は賃貸人の要求次第いつでも返地する。」旨の約束がなあれたことを認めうるが、申立人は、右土地は本件土地の南側にそつた細長い土地であるとし、かつその返還義務を争うところ、その当否は結局最終的には訴訟で決るほかはなく、本件改築計画は、当事者双方の主張するいずれの土地にもまたがらずして建築されるものであるから、前記土地の返還義務の当否は、本件増改築を妨げるものでない。

(三) つぎに、相手方は、本件賃貸契約の期間満了時には更新を拒絶する意見であるから本件改築は許されないと主張するが、本件において、期間の延長を要しないうえ、現段階において一一年の期間満了時に更新を拒絶しうる正当事由が存すると予想することは困難であつて、右事由により本件改築を許さないのは相当でない。

3 しかして、前記資料によれば、申立人の増改築計画は、土地の通常の利用上および法令の制限上から相当なものと認められる。そこで本件申立は認容すべきである。

4 つぎに附随の処分について検討する。

鑑定委員会は、申立人に財産上の給付として金六〇万円を支払わせ、地代を3.3平方米当り金一一〇円に増額するを相当とし、その算定基準を財産上の給付については、期間満了時における建物の買取価額の増加を基準として慣行による承諾料を参考としている。

ところで、本件増改築は、既存建物の一棟を取りこわし、増改築するもので、これにより建物の朽廃時期を遅らせ、本件土地の借地期間を延長し、借地人に利益を与える反面、地主に不利益を与えるのであるから、右利害を調整するため申立人に財産上の給付を命ずべきであり、その額は、既存建物の耐用年数、改築が既存建物の一部であることを考慮したうえ、従前の裁判例に徴し、鑑定委員会の定める本件土地の更地価格(3.3平方米当り金二八〇、〇〇〇円)の二%にあたる総額金五八七、〇〇〇円(千円以下切捨て)とするのが相当である。鑑定委員会は買取価格の増加を基準とするが、現段階で本件賃貸契約が終了して買取請求権が行使される時点を定めることは困難であるから、右算定方法は採用しない。

賃料は、昭和二九年九月以来紛争が生じて供託中であり、この際その額を定めるのを相当とし、その額は、従前の賃貸借の経緯、本件土地の利用状況を考慮し、底地価格(更地価格の三〇%)に1.5%を乗じたものに固定資産税および都市計画税を加え、一か月3.3平方米当り金一四二円と定める。(なお借地期間の延長をするのは相当でない。)(筧康生)

目録 (一)

東京都杉並区高円寺南二丁目二二一番五

宅地 1613.22平方米(488坪)のうち

346.54平方米(104.83坪)

目録 (二)

(現存建物)

(一) 東京都杉並区高円寺南二丁目二二一番五

家屋番号 五二三番

木造瓦葺平家建 居宅

37.19平方米(11.25坪)

(二) 同所

家屋番号 四八〇番二

木造瓦葺二階建 居宅

98.71平求米(29.86坪)

37.32平方米(11.29坪)

(増改築計画)

前記中(一)の建物を取りこわし

木造モルタル塗り瓦棒葺 居宅

一階 60.72平方米

二階 55.76平方米

を建築する。

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